【被曝】100mSv以下は安全のトンデモ学説と、それをさらに15倍にした文科省基準を暴いてみる

反戦な家づくり 【被曝】100mSv以下は安全のトンデモ学説と、それをさらに15倍にした文科省基準を暴いてみる


【被曝】100mSv以下は安全のトンデモ学説と、それをさらに15倍にした文科省基準を暴いてみる
多くの人が言っているように、子どもの放射線許容量を年間20mSvに引き上げたことは、殺人にも匹敵する暴挙だ。

なんでこんな事が許されるのか。
この国は、一体どうなってしまったのか。

原子力を推進してきた自民党ですら、人為的に浴びる放射線について、大人の許容量を年に1mSvとしてきたのだ。
それを一気に20倍にするとは。しかも、放射線に対する感受性が強い子どもに。

20mSvを正当化する理論は、ただ一つ。
「100mSv以下では、癌になった症例はない」という、御用学者(バカ)の一つ覚えの台詞だ。

「閾(しきい)値はないけれども、実際には100mSv以下では症例はない」という台詞が、原発推進の立場のHPや文章には必ず書いてある。
もっとスゴイのは、極低線量ならば放射線は体に良い という頭のぶっ飛んだヤツもいる。

例えば、(財)放射線影響協会(放影協)

ここのホームページを見ると、「低線量の放射線は体に良いのに、なんで計画的避難なんてするの?」と思えてくる。モノスゴイことが書いてある。
ちなみにここは、国の委託研究を生業としている研究所である。

100mSv以下については、このように書いてある
「原爆を受けた人たちの調査などからも、人間では200ミリシーベルト以下というような低い線量では、がんによる死亡者が余計に発生したという明確な結果は出ていません。」
http://www.rea.or.jp/wakaruhon/mokuji.html

この手のぶっ飛んだのは、いくらでもいる。

(独)放射線医学総合研究所(放医研)

「およそ100ミリシーベルト未満では、放射線ががんを引き起こすという科学的な証拠はありません。」
http://www.nirs.go.jp/information/info.php?i13

そして、総本山とも言うべき(財)放射線影響研究所放影研

統計学的には、約 150 ミリシーベルト以下では、がんの頻度における増加は確認されていません。」
http://www.rerf.or.jp/rerfrad.pdf

いずれも原子力ムラの重要な一画をなす組織。理事には元○○省やら元原子力安全委員やらが顔を並べている。

面白い(?)のは、御用3組織で、100mSv,200mSv,150mSvと数字が違うことだ。
元データは同じなのに、なんで?
この一点を見ても、〜〜以下は安全というのが「科学的な証拠」ではないことが透けて見える。

そして、放影協も放医研も放影研も、セリフの最後は「結果は出ていません」「根拠はありません」「確認されていません」だ。
「癌による死亡者は発生しません」「癌をひき起こしません」「癌は増加しません」とは言っていない。

つまり、「○(癌になる)の証拠がない」と言っているだけで、「×(癌にならない)の証拠がある」とは一言も言っていないのである。にもかかわらず、言葉のアヤで、まるで×(癌にならない)が明らかのように思わせているのだ。

なんというペテン師たちか。


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それにしても、「根拠がない」とか「結果がない」とか言うからには、なにかデータがあるのだろう。それが何かと探ってみると、全ての情報の源流は、(財)放射線影響研究所放影研)に行き着く。

名前がややこしいが、ここは他とは一線を画す、由緒ある組織だ。
どんな由緒かというと、ゲンバクを落としたアメリカが、核兵器の「効果」を調べるために設立した原爆傷害調査委員会(ABCC)がその前身なのである。

被爆者を強制的に調査する一方、治療は一切しないという、人体実験の研究所として一躍勇名を馳せた。
この放影研に、爆心から2.5キロ以内で被爆したひと93,611人と、そうでないひと(対照者)26,517人のデータが、1950年から現在に至るまで、営々と蓄積されている。

現在でも被爆者の半数は存命で、当分この調査は続けられていく。
世界でも類例のない、放射線被曝による健康被害の調査なのである。

放影研は、ホームページで研究概要を公開しているので、それを少し見てみよう。

まずは、被爆者の白血病の発病リスク

次は、固形癌の発病リスク

これらは、被曝していない人よりも、どれだけ発病しやすいか というグラフだ。
右肩上がりと言うことは、被曝しただけリスクが高くなっているということ。
どう見ても150以下は安全には見えない。

さらに、放影研のデータを元にした本がある

放射線および環境化学物質による発がん
─本当に微量でも危険なのか?─
編著:佐渡敏彦 他

この第4章に、放影研の2001年の報告からグラフが引用してある

このグラフを発表している放影研が、なにをどうしたら「150mSv以下はがんの頻度における増加は確認されていません。」と言えるのか。常人には理解しがたい。

むしろ、300mSv以下は、率にするとリスクは上昇している。

そしてこの本では、グラフを引用した後に決定的なことが書いてある。

「比較対照群として3km以内の被ばく線量0.005Sv未満群を用いている」

ゲンバクの爆心から3km以内にいて、たまたま被ばく量が少なかった人と、多かった人を比較している というのである。
0.005Sv=5mSv未満の被曝をした人と、もっと大量の被曝をした人を比較している と。

ここで言う被ばく量とは、ピカドンと爆発したときに放出された放射線の被ばく量。
死の灰や、残留放射能による長期にわたる被ばくは含んでいない。
もちろん、内部被ばくは考慮されていない。

爆心から3km以内にいたけれども、たまたまビルの中などにいてピカの直撃を受けなかった人が、その後死の灰や残留放射能によって被ばくしなかった訳がない。
にもかかわらず、そういう被ばくは全くカウントせずに、「被ばくしていない人」ということにして、「被ばくした人」と比較しているのである。

実際はある程度の被ばくをした人を「ゼロ」としているのだから、当然ながら、直撃で被ばくした人のリスクは、より低く評価される。

0と10の差は10だけど、5と10の差は5しかない。
ということ。

これは、決定的な問題だ。

被ばくした人と被ばくしていない人を比較するのではなく、直撃被ばくした人と残留放射能で被ばくした人比較していたなんて。
もし残留放射能で被ばくした人たちが、直撃被ばくした人と同じくらいたくさん癌になっていたら、直撃被ばくした人たちのリスクは非常に低く評価される。
しかも、残留放射能で被曝した人のリスクは、どんなに癌が発生しても永遠にゼロのままだ。


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さらに、研究開始当時はアメリカの機関だった放影研(当時はABCC)は、非常に不可解なことをやっている。

放影研の寿命調査 第1報(1958年)によると

「サンプルは爆心地からの近距離被爆者、受けた線量が無視できる遠距離被爆者および両市へ転入してきた非被爆者からなり、総数は 100,000名である。」
「非被爆者の死亡率は被爆者あるいは日本全国の平均と比較して異常に低いことが注目された。」
「今回の報告では放射線の影響を検討するにあたって、非被爆者は考慮せず異なった距離の被爆者間の比較をすることとした。」
と、ゲンバクの後に広島長崎へ転入してきた人を比較対照集団から除外した。

このあたりの、比較対照集団の選定については、非常に情報がわかりにくい。
後述の宮尾教授によると、爆心から20キロほど離れた呉市で比較対照の集団を作ろうとしたけれども放棄された という。

見る資料によって書いてあることがマチマチ。
どうやら、放影研は、この比較対照集団のことを隠そうとしているように見える。


さらに、寿命調査第8報(1977)以降は、残っていた対照集団との比較自体をやめてしまった。
比較対照せずに、統計処理だけで被曝ゼロの場合を想定して、数字を作ってしまったのだ。

こうして、都合が悪い結果が出ると、比較対照のほうを除外するということをやりつづけて作り上げたのが、世界最高の放射線影響の疫学調査である寿命調査なのである。

そもそも、核兵器の威力を調べるために始めた調査なのだから、さもありなんと言えばそれまでだが。


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それでもなお、放影研のグラフを見れば、100mSv以下が安全には見えない。
ある程度被曝した人をゼロにして比較してもなお、100mSv以下はリスクがあるように見える。


ここまで来ると、もう政治力としか言いようがない。

なにせ、放影研のレポートの中でも、繰り返し150mSv以下のリスクについて書かれている。

「被曝線量が0.15 Gy以下の対象者に解析を限定した場合にも、統計的に有意な線量反応が認められた」

「固形がんの過剰リスクは、0−150mSvの線量範囲においても線量に関して線形であるようだ」

などなど

にもかかわらず、震災用の特設ホームページでは、「統計学的には、約150ミリシーベルト以下では、がんの頻度における増加は確認されていません」というのだから、この組織の良心がどれほどのものか良く分かる。

ちなみに、「統計学的」「頻度」という言葉に逃げ道は用意されていて、一見増えているように見えても、複雑な計算と定義をした結果、統計学的に発生頻度は増えてませんと言って煙に巻くのだろう。


100mSv以下は安全 という神話は、こうやって作られたのである。

①原爆の被爆者を調査する際に、残留放射能で被曝した人を比較対照にする

②それでも都合の悪い結果が出たら、比較対照のほうを無効データにする

③ややこしい統計処理をして、実際にはある癌の増加を無いものにする

④そうやって、学者は「100mSv以下は危険という証拠はない」と言う

④さらに、マスコミはそれを「100mSv以下は安全」と姑息に言い換える


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もう一つ、この寿命調査でも、福島の学校の基準でも共通の 重大問題がある。

内部被曝を考慮していない。

名大の宮尾教授らによると、ゲンバクのピカで5mSv未満の被曝だった人でも、その後の残留放射能によって370mSvくらいの被曝をしていただろう という。

福島でも、降り積もった放射性物質を吸い込んだり飲み込んだり体に着いたりすることによる被曝は考慮されていない。

同じシーベルトであっても、レントゲン室には放射性物質は降っていない。純粋に「線」だけがある。
だから、部屋を出ればその後の被曝はゼロになる。

しかし、福島では「線」を出す元である放射性物質が絶えず降り積もっているのである。
体に入れてしまえば、その後もずっと被曝し続けることになる。

放影研の寿命調査も、兵器の威力を調査する目的だから、残留放射能なんてまったく留意されていない。
というより、内部被曝は意図的に無視抹殺された。
これは、原爆症の認定訴訟でも大きな争点になった。

そう、原爆症の認定訴訟は、寿命調査で「非被爆者」「被曝ゼロ」とされた人たちの闘いであった。

ピカの翌日以降に爆心地に入った人びとは、アメリカ→放影研からは「被曝していない人」とされたけれども、明らかに内部被曝を累積し、たくさんの人が発病した。

彼らの闘いにより、一連の判決では内部被曝を認め、ことごとく原告勝訴になったのは記憶に新しい。

そして、そのことはとりもなおさず、寿命調査による放射線リスクのデータが間違っていることを示している。


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寿命調査の間違いを、ハッキリと明示したのが、名大の宮尾克教授である。

宮尾教授らの研究は

1.放影研の広島原爆被爆者約12万人について、残留放射線は考慮されておらず、原爆の初期被爆しか考慮されていない。

  被ばく線量ゼロの点は、調査対象者についてのポアソン回帰分析(統計処理)によって求めており、対照集団(生活条件などが同じで、被曝が0の集団)を決めて比較していない。

2.(宮尾教授の)調査では対照集団として、広島県岡山県の1945年当時0〜34歳の集団110万人を取り、この人々の平均死亡率により寿命調査の対象者が死亡したとした場合の死亡数と、実際の死亡数の比(SMR)を求めた。

というもの。

つまり、まったく被曝ゼロの人と同じ平均死亡率だったら被爆者は何人死ぬことになるか という人数と、実際に死亡した被爆者の人数を比較した。

この結果は、論文は難しくて理解できないので、共同通信の記事を引用する


放射線も高いがん死亡率 非被爆者と比較調査
2008/08/04 共同

 広島で被爆した人のうち、浴びた放射線が少量で健康に影響が少ないとされた人でも、被爆していない人よりがんで死亡する率が高いことが、名古屋大情報連携基盤センターの宮尾克教授(公衆衛生学)らの研究グループの4日までの疫学調査で分かった。

 研究結果は、9月15日発行の日本衛生学会の英文雑誌で発表する。

 同グループは、放射線影響研究所放影研)が調査している広島での被爆者約5万8000人のデータを、1971年当時の広島、岡山両県の住民で原爆投下時に0−34歳だった非被爆者計約194万人と同じ年齢構成などになるよう補正した。

 その上で、被爆者を被ばく線量によって極低線量(0・005シーベルト未満)、低線量(0・005−0・1シーベルト未満)、高線量(0・1シーベルト以上)に区分。それぞれの各種がん死亡率を非被爆者のものと比較した結果、極低、低線量の被爆者は非被爆者よりも固形がん(白血病など造血器系を除くがん)で1・2−1・3倍高く、肝がんでは1・7−2・7倍、子宮がんは1・8−2倍高かった。

(引用以上)

元の論文は、宮尾先生がホームページで太っ腹にも完全公開しておられる

http://www.miyao.i.is.nagoya-u.ac.jp/wp/?p=50

宮尾先生は放射線の専門ではないが、座談会でこう述べている

Q:今回の研究は始めようとした動機はどこにあるのか。

A:(寿命調査は)正しい対照集団を取っていないのはおかしい。そこを正したいと思っている。

http://www.engy-sqr.com/member_discusion/document/gokuteihibaku090716.htm


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ところで、この座談会を主催しているのは「エネルギー問題に発言する会」という団体で、前出の(トンデモ)放影協の金子正人なんかが顔を並べているような原発推進団体。

なんでこういう人びとが宮尾先生を呼ぶのかというと、ゲンバクで極低線量の被曝の人でも、370mSvの内部被曝があっただろう ということが、原発推進派にはお気に入りなのである。

で、宮尾先生が不在の会合では、この論文を出汁に使って「370mSv以下は健康に影響ない」と言い出す始末。
まったく、トンデモ学者は、原子炉にでも閉じ込めない限り、手のつけようがない。

http://www.rsf.or.jp/download/eventreports/EventReport_10.pdf


何度も言うけれども、レントゲン検査や飛行機の中のように、放射「線」だけが飛んでくる場所ならば、ガイガーカウンターに示される数字x時間=外部被曝だけを考えればいい。

しかし、「元」が飛んできて吸い込んでしまう場所では、ガイガーカウンターの数字x時間x100位の被曝量を覚悟しなくてはならない。

文科省によれば、福島の学校では、屋外3.8μSv/時、屋内1.52μSv/時を許容限度にしたという。

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/04/1305174.htm

(3.8+1.52)/2x8時間x100x300日≒640mSv

ざっと見積もっても、学校にいる1年間だけで、原発推進派のトンデモ学者が言う「安全で無く無い」という限度をすらはるかに超える。さらに、家も遠くない場所にあるのだから、帰宅後も被曝し続ける。
もし、許容限度近くが続く環境ならば、トンデモ学者ですら白血病甲状腺癌の多発は避けられないと言うだろう。

内部被曝については、原発構内で働いていた女性が被曝限度超えたというニュースがあった。
防護服でガチガチに固めていても、外部被曝が3.95mSv:内部被曝が13.6mSv=1:3.5
つまり、実際の被曝量は外部被曝量の4.5倍だったと言うこと。

外部被曝が強く、内部被曝には万全を期した環境で4.5倍だから、外部被曝原発構内よりはかなり弱く、内部被曝には対しては簡単なマスク程度で、飲み食いもする学校などの環境では、こんなもので済むわけがない。

悪名高きSPEEDI試算値でも、成人の外部被曝と、1歳児の内部被曝は100倍くらいの差がある。

http://www.nsc.go.jp/mext_speedi/0312-0424_ex.pdf


http://www.nsc.go.jp/mext_speedi/0312-0424_in.pdf

学校で640ミリ。帰宅してからも含めれば、ゆうに1000ミリ=1シーベルトは被曝する。

これのどこが安全??

どこのトンデモ学者が安全と??

10000歩譲って、100mSv以下は安全だとしても、ガイガーカウンターに表示される外部被曝は、年間100m÷100=1mSv以下にしなければならない。

ということは、1m÷(364x24)≒0.0001m=0.1μ。自然放射線がマックス0.15μとしても、ガイガーカウンターの数字は、0.25μSv/時 が許容限度ということになる。

文科省が決めた3.8μは、トンデモ学者の15倍ということになる。

トンデモ学者が言う「100mSv以下は安全でなくはない」自体が、これまで縷々述べてきたようなペテンの集大成なのに、その数字のさらに15倍を基準にする文科省

いくら文科省の本業が原子力とロケットで、子どもの教育は片手間に過ぎないとは言え、あまりにも非道すぎる。

いま、多くの人びとがこの基準緩和に抗議している。

絶対に許してはいけない。


(新)署名受付フォーム:子どもに「年20ミリシーベルト」を強要する日本政府の非人道的な決定に抗議し、撤回を要求

呼びかけ団体:グリーン・アクション、グリーンピース・ジャパン原子力資料情報室、福島老朽原発を考える会、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会、国際環境NGO FoE Japan
<一次締め切り:4月25日(月)23時>
<最終締切:4月30日(土)23時>

https://spreadsheets1.google.com/spreadsheet/viewform?hl=en&hl=en&formkey=dFViLWlJSXVRSEw0NjNRWE1DQVk3MUE6MQ#gid=0